寿司職人として挫折した話|同期との差、不器用さ、孤立を乗り越えて

寿司職人の世界は、一見華やかに見えても、裏では想像以上に厳しい。

見習いのうちは、失敗の連続で、努力しても報われないことが多い。

僕自身、何度も挫折しかけた。

同期との温度差、不器用さ、怒られる日々、そして職場での孤立——。

心が折れかけた時期を乗り越えて今がある。

この記事では、寿司職人として挫折したリアルな体験と、そこから学んだことを正直に書いていく。

向いてないのかも…と思った最初の壁

寿司職人の道を歩きはじめて数ヶ月。

最初にぶつかったのは、「自分には向いてないのかもしれない」という壁だった。

この世界は、努力よりも“結果”で評価される。

どれだけ早く出世するか、どれだけ正確に握れるか。

周りがどんどん成長していく中で、自分だけ取り残されている気がした。

仕事のペースも遅く、怒られることばかり。

あの頃の僕は、毎日「自分なんかが寿司職人を名乗っていいのか」と悩んでいた。

でも、今思えばその感情こそ、本気で向き合っていた証拠だったと思う。

俺が初めて心が折れた日|同期との温度差

入店して間もない頃、同期が5人いた。

その中でも特に1人は、朝早く来て夜遅くまで仕込みをしていた。

正直、最初は「そこまでやらなくても」と思っていた。

けれど、ある日、板場に立てるメンバーの発表があり、その同期だけが抜擢された。

その瞬間、心の奥にズシンと重いものがのしかかった。

「努力の温度差」って、目に見えないけど確実にある。

焦りと劣等感で、心が折れそうになった。

自分より努力してる人を前にすると、言い訳が全部消えてしまうんだ。

それからは、少しでも早く出勤して練習するようになった。

でも、心のどこかで「もう遅いかもしれない」と感じていた。

不器用な自分との戦い|社内テストで一人だけ不合格

次の挫折は、社内の「にぎりテスト」だった。

10人中、合格できなかったのは僕だけ。

みんなが笑顔で合格報告をしている中、自分だけが包丁を片付けながら無言だった。

帰りの電車で、情けなさと悔しさで涙が止まらなかった。

僕は昔から不器用で、何をするにも人の倍時間がかかる。

それでも必死にやっていたつもりだったからこそ、結果が出なかったことが本当にきつかった。

でも、今思えば、不器用だったからこそ、手の感覚や丁寧さを大切にするようになった。

焦って覚えるより、じっくり積み上げる。

それが後の僕の“武器”になった。

「また同じミスか」と怒られる日々

職人の世界では、「同じミス」は許されない。

僕も何度も同じことで怒られた。

・仕込みの量を間違える

・魚の目利きを誤る

・シャリの温度を確認し忘れる

先輩たちの怒号が飛ぶたびに、「なんで俺はできないんだ」と自分を責めた。

でも、あるとき気づいた。

怒られているうちは、まだ見られている。

本当に見放されたら、誰も何も言わない。

あの頃の怒られた経験が、今の“現場感覚”を育ててくれた。

当時は地獄のように感じたけど、今では感謝している。

ベテラン寿司職人たちに無視された日々

一番つらかったのは、怒られるよりも「無視」されたことだった。

ミスが続いたある時期、ベテラン職人たちから完全にシカトされた。

挨拶しても返ってこない。

話しかけても、目を合わせてもらえない。

その空気の中で仕事をするのは地獄だった。

朝起きて「行きたくない」と思ったのは初めてだった。

このとき、本気で寿司職人を辞めようと思った。

でも、ある先輩がこっそり声をかけてくれた。

「お前のこと、ちゃんと見てるやつはいるから。」

その一言が、救いになった。

孤独の中でも、自分を見てくれている人が一人でもいる——それだけで人は立ち直れる。

無視される毎日が続くと、「自分はこの世界に向いてないのかも」と思う瞬間が増えますよね。人との関係でつまずくと技術以上に心が折れやすくなります。もし「板場で話すと緊張する」「先輩と会話が続かない」と感じるなら、会話の不安を具体的に解消する記事も書いています。↓

寿司職人が会話で不安を感じる理由と克服法

挫折を乗り越えるために必要だった3つのこと

僕がこの時期を乗り越えられたのは、次の3つを意識したからだ。

①「上手くやろう」とせず、「辞めない」を目標にする

うまくやろうとすると焦る。

まずは「今日も続ける」だけでいい。

それが積み重なって、気づけば周りが追いつけなくなる。

②「敵」を作らず、「味方」を一人でも増やす

寿司の現場は人間関係が命。

一人でも信頼できる人がいれば、どんな修羅場でも耐えられる。

僕も、あの一言をくれた先輩のおかげで救われた。

③ 自分の成長を“他人と比べない”

同期と比べても意味がない。

成長スピードは人それぞれ。

昨日の自分より、少しでも前に進めていたら、それでいい。

今だからわかる、寿司職人が“続けられる人”の共通点

続けられる人に共通しているのは、心の耐久力だと思う。

技術がある人よりも、心が折れない人が最後に残る。

・怒られても、次の日には笑顔で出勤する

・失敗しても、諦めずに練習を続ける

・他人の評価より、自分の成長に集中する

華やかに見える寿司職人たちも、裏では何度も挫折している。

だからこそ、挫折した瞬間こそが、職人としての“本当のスタート”なんだと思う。

最後に伝えたいこと

寿司職人としての道は、本当に険しい。

何度も壁にぶつかり、何度も心が折れそうになる。

でも、あの時辞めなかったから、今の自分がいる。

技術は時間が解決する。

だけど、“心を折らない力”は、自分で育てていくしかない。

挫折してもいい。

ただ、包丁を置かない限り、職人であることは終わらない。

まとめ

  1. 挫折は「向いてない証拠」ではなく、「本気で向き合っている証拠」
  2. 不器用でも、焦らず積み上げれば必ず形になる
  3. 孤立しても、見てくれている人は必ずいる
  4. 辞めなければ、いつか笑える日が来る