寿司職人が教える“段取り力”の極意|仕事が速い人ほど準備している

  • 2025年10月13日
  • 2025年10月13日
  • 仕事術

寿司職人の世界には、古くからこんな言葉があります。

「段取り八分、仕事二分」。

つまり、仕込みや準備の時点で仕事の八割が決まるという意味です。

包丁を握る前から勝負は始まっている──。

それが職人の世界の常識です。

どんなに技術が高くても、段取りが悪ければ仕事は遅く、雑になります。

逆に、段取りが整っていれば、動きは美しく、仕事にも余裕が生まれる。

そしてこの“段取り力”は、寿司職人だけでなく、あらゆる仕事に通じる普遍的なスキルです。

本記事では、現役の寿司職人としての経験から、段取りの本質とその磨き方を紹介します。

寿司職人にとって段取りとは何か

段取りとは「作業を始める前に、すでに結果を決めておくこと」です。

たとえば、営業前の厨房では、すべての包丁が研がれ、ネタが整えられ、

まな板や調味料の位置も決まっています。

ここで大切なのは、単なる準備ではなく、“流れを作る”こと。

段取りとは、手を動かす前に「どうすれば無駄なく、流れるように進むか」を考える思考術です。

寿司屋では、開店時刻が1分でも遅れたら信用を失います。

だからこそ、職人たちは「想定外をなくす」ために前もって流れを設計する。

この考え方は、会議や営業などのビジネスシーンにもそのまま応用できます。

仕事を早く進めるための準備法

段取りを極めるために、寿司職人が日々実践している準備法を紹介します。

どれもシンプルですが、現場では大きな差を生みます。

① 前日の「仕込み」で翌日を楽にする

寿司職人は、営業が終わった後すぐに翌日の仕込みを始めます。

ネタの下処理、シャリ酢の準備、器具の清掃──。

「明日の自分が楽できるように」動くのが、できる職人の共通点です。

仕事でも同じで、1日の終わりに翌日のタスクを整理しておくだけで、

朝からスムーズにスタートできます。

段取りとは“先に苦労して後で楽をする”考え方です。

② 道具(ツール)の位置を固定する

寿司職人の仕事場では、包丁の位置、まな板の角度、調味料の順番まで徹底して決まっています。

これは単なる習慣ではなく、思考の省エネ化です。

どこに何があるか考える時間をゼロにすることで、集中力を切らさずに作業できます。

デスクワークでも同じで、

PCのフォルダやツールの配置を固定すれば、探す時間を減らせます。

段取りとは、環境設計でもあるのです。

③ 想定外を想定しておく

寿司屋では仕入れの遅れや急な予約など、想定外が日常茶飯事。

プロの職人ほど、それを前提に準備します。

「魚が入らなかった場合の代替ネタ」「急な大人数の対応策」などを常に頭に入れておく。

ビジネスでも同じです。

資料が届かない、担当者が急に休む、プレゼンが前倒しになる──。

想定外を想定しておけば、焦らず対応できます。

段取り上手=危機対応力の高い人でもあるのです。

段取りが遅い人に共通する落とし穴

段取りの大切さは誰もがわかっているのに、なぜうまくいかないのか。

そこには、共通する“落とし穴”があります。

① 「やりながら考える」クセ

思いつきで動く人ほど、ミスが増えます。

「やりながら考える」は一見行動的に見えて、実は非効率。

段取りの目的は“動き出す前に考え終えること”です。

② 優先順位があいまい

寿司職人の仕込みは、時間配分が命。

「冷やすもの」「火を通すもの」「寝かせるもの」──

順番を間違えるだけで、効率は大きく落ちます。

仕事でも、すぐにやるべきことと後回しでいいことを整理する力が段取り力です。

③ 反省を翌日に活かさない

段取りは経験の積み重ねでしか上達しません。

昨日の失敗を今日に活かす習慣がない人は、いつまで経っても同じところでつまずきます。

「何がロスだったか」を小さく記録するだけで、翌日は確実に改善されます。

段取りがうまい人ほど「想像力」がある

段取りとは、先を読む力そのものです。

寿司職人の仕事は、目の前の作業ではなく「数分先、数時間先」を常に想像して動きます。

ネタの量、客の入り、火入れのタイミング──

これらを予測する想像力があるから、無駄のない動きができる。

段取りが上手い人は、周囲の行動まで読んでいます。

「この後、同僚がこれを使うだろう」「お客様が次に何を求めるか」──

この“他者の行動を読む力”が、仕事全体をスムーズにします。

ビジネスでも同じで、上司やクライアントの次の動きを予測できる人ほど段取りが早い。

想像力とは、人の動きを先読みする力。

段取り力の本質は、まさにこの“想像する習慣”にあります。

結論:段取り力は技術より先に磨くべきスキル

寿司職人として働いていて強く感じるのは、

「技術よりも段取りが上手い人が信頼される」ということ。

包丁の腕前よりも、準備の丁寧さや流れの設計ができる人のほうが、結果的に仕事が速く、綺麗です。

技術は時間をかければ身につきますが、段取り力は“考え方の習慣”が変わらないと育ちません。

段取りが整うと、仕事は静かに速く、美しく回り始めます。

それは寿司職人だけでなく、どんな職業にも共通すること。

仕事ができる人ほど、準備に時間を使っています。

段取りとは、努力を最大限に活かすための“下地”。

磨けば誰でも伸びる、最強のスキルです。

✅ まとめ

  1. 段取りとは「結果を決める準備」のこと
  2. 前日の仕込み・ツール固定・想定外対策がカギ
  3. 段取りが遅い人は「考える順序」が逆
  4. 想像力がある人ほど段取り上手
  5. 技術より先に段取り力を磨くべき